川崎市内の高校で、高卒就職の実態などを視察しました
就職「超氷河期」と言われるなか、高校生の進路決定の分岐点の2月、川崎市立橘高校、商業高校、総合科学高校、高津高校などを訪問し、高校生の状況や就職の実態をうかがいました。入試などでお忙しい中ですが、どの学校でも丁寧に対応していただきました。
A高校
○就職の状況と生徒の実態
就職希望の生徒は半数。「進路未決定」の生徒も卒業後の5・6月に追加求人する企業に進路が決まっている。卒業生がいる、「定時制教育振興会」など、協力的な企業の求人を確保しているが景気悪化で求人は3分の2に、でもなんとか100%就職につなげている。定時制は、「自分にあった仕事がないからバイトでいい」「面接の場所まで行けず、担任が背中を押してなんとか行った」など苦労している。09、10年度ともに就職希望者全員が就職している。
B高校
○就職の状況
全日制・例年50~55人の就職希望者で推移。今年度の求人は4年前の42%に減少、それでも専門的な教育と企業と培ってきた関係性を背景に100%の就職を達成している。専門技術があるので卒業生の離職率は低い。
○就職の状況と生徒の実態
定時制・ハローワークの求人票をネットで見る対応をしている。生徒が自らネットなどで求人情報を探す力をつけられるように指導している。面接で4・5回落とされてチャレンジできなくなる生徒もいる。08年度は81%、09年度は96%、10年度は85%が就職している。
C高校
○就職の状況と学校の体制
進路担当は4年生の担任と副担任。教科の専門ではあっても進路の専門ではないので大変。「急行と各停を間違えて面接に遅刻」「面接で緊張して真っ白になり学校名が言えなかった」などの生徒に粘り強く援助をしている。求人は「製造しかない、製造しか選べない」といった現実。高校生の不安定就労が増えている。「即戦力」志向の企業も増えている。
○生徒の実態
学費高騰のもとバイトで貯金し進学、という生徒も毎年いる。多くの生徒は専門学校や大学進学を希望するがあきらめる生徒も多い。「大学まで無償でいければ勉強したのにな」ともらした生徒が印象的。生徒が「やりたいこと」を切り取っていき、卒業に近づくほど希望を小さくしていく。定時制の子は「ワード・エクセルのできる人」と求人票にあるだけで引いてしまう。自宅にパソコンがない子が多い。
○関係機関との連携
就職活動をしないままに卒業してしまう子が多いため、「正社員になるための就職活動を経験をさせたい」と思い、昨年度から「若者サポートステーション」「キャリアサポート」との連携を手探りしてきた。「合同説明会の会場には行くが、各企業のブースには足が出ない」などの事例があり苦労している。生徒の4分の3が「自分のことが好きではない」とアンケートに回答、自己否定感が強く外に出られない。意識的に工夫すべきだ。横浜の定時制高校などでNPOと日常的に連携している取り組みも研究したい。
○職業技術などの問題意識
多くの生徒がアルバイトをしているが、スーパーやコンビニのレジ打ちなどでは技術は身につかない。職業訓練校は安い費用で学べるため、紹介しているが統合されてしまい足が遠のいている。安くて技術が身につく場を多くできたらいい。
D高校
○就職の状況
求人はハローワークで対応。09年度は41%、10年度は80%、今年度は現時点で半分の生徒が内定している。学校を頼らずバイト先や縁故で就職する「自己開拓」が半分くらい。就職担当は3・4年生の担任、進路担当と教頭で構成。
○生徒の実態と学校の取り組み
面接が苦手な生徒が多くなかなか内定が取れない。また何回か落とされる中で自信を失ってしまう。「話し下手」「アピール下手」を克服するためパンフを作成した。就職後3日や1週間でやめてしまう、といった事例もあるため「バイト感覚ではダメ」「2・3社落ちてもへこたれるな」というキャリア教育をしている。
E高校
○就職の状況
以前からのつながりで求人はある。企業それぞれの事業計画があるので毎年求人が来る、とはいかない。例年100%就職。自己アピールの苦手な生徒はいるが、何回も練習し粘り強く取り組んでいる。家庭の経済的事情を理由にした進路変更もあるが大勢ではない。
○生徒の実態と学校の取り組み
川崎市認定「かわさきマイスター」の実演や、インターンシップ、ハローワークと提携した企業ガイダンス、地元食品会社への工場見学など取り組んでいる。生徒が自信をもって学べるようにするために、資格を取るように指導している。
『進路の手引き』を作成して指導している(「憲法で述べられているように、働くことは人間としての権利であり、働くことがこの権利を行使することです。また働くことは国民の義務であり、働くことでこの義務を果たすことになります」「…真剣に考え自分にとって最良の就職先を決定してください」と就職指導の導入をしているテキスト)。
中退者はかなり減った。
視察を終えて
企業と長年連携の関係をつくってきた専門高校でも、求人が大きく減っていました。市長を先頭に求人開拓をしている北九州市の取り組みを参考に、川崎市が正規雇用拡大の先頭に立って責任を果たすべきではないか、と思いました。
「残業代が払われない」「うちの会社に有給休暇はない、と言われた」など、職場に違法があってもなかなか声を上げるのは大変です。各校でそれぞれ「キャリア教育」に取り組んでいますが、卒業した生徒たちが職場で声をあげられるように、憲法や労働基準法の知識や、労働環境の実態を知らせることが大事ではないかと思いました。
また自己否定感を持ち、高すぎる学費のもとで進路をあきらめざるをえない高校生の実態に、胸がつぶれそうな思いをしました。公的職業訓練はこの間どんどん削られてきましたが、削減どころか充実が求められていることを痛感しました。若者サポートステーション、キャリアサポートかわさきなど川崎市の事業もいかして、若者の進路選択への一歩に寄り添って応援できるように取り組みを強めたいと思います。
そしてなにより、先生方が生徒に寄り添って頑張っていることに心を動かされました。こうした先生たちの努力任せにするのではなく、頑張りを後押しするべきだと痛感しました。議会でもひきつづき取り上げていきたいと思います。