後期高齢者医療県広域連合議会(2013年10月28日)での質問全文を掲載しました。
後期高齢者医療県広域連合議員定数は20名、そのうち、日本共産党から選出されている議員は私と白井横浜市議のみです。この制度の問題を追及するのは、私たち二人しかいないのが残念です。次回の予定は3月です。
大庭 質問①川崎市の大庭裕子です。連合長に伺ってまいります。
制度の見直し議論の経過についてです。
後期高齢者医療保険制度は、病気になりやすい75歳以上の高齢者を一つの保険制度に囲み、高齢者人口と給付費が増大すれば保険料負担が増大する制度です。高齢者に「給付減か負担増か」を、強制する過酷な制度として国民の批判はたえません。そのため、創設した自公政権下でも国民の批判に応えて一定の改善をせざるを得なかったものです。廃止の公約を掲かげた民主党政権下では、公約を破って廃止を遅らせたものの、厚労省の高齢者医療制度改革会議の「最終とりまとめ」で、一定の改革案を示していたものです。それが、民主・自民・公明による「税と社会保障一体改革」の3党合意で、捻じ曲げられ、政権交代によって、今日に至っています。この大きく揺れ動いた、この間の経緯について、どのような見解をお持ちか、連合長にお聞きします。
広域連合長 答弁①
はじめに、後期高齢者医療制度の見直し議論にかかる見解についてですが、本制度は、20年4月に施行されましたが、当初は、制度の周知不足等により、多くの苦情が寄せられました。また、施行から5年が経過した今年度まで、本制度のあり方が議論されてきたことから、制度の先行きが見通せない状況にありました。しかしながら、本年8月に社会保障制度改革国民会議の報告書において、本制度は十分定着し、今後は現行制度を基本としながら、必要な改善を行っていくことがてきとうである、とされたことから、今後とも安定的に運営されていくものとかんがえています。
大庭 質問②
現行制度を継続についてです。
民主党政権下での厚生労動省は、2010年12月の高齢者医療制度改革会議の「最終とりまとめ」で、現行の後期高齢者医療制度を廃止し、75歳以上の方も現役世代と同様に国民健康保険か、被用者保険に加入するとしていました。しかし、2013年8月に出された社会保障制度改革国民会議の報告によれば、この改革案さえ投げ捨てられ、現行制度を基本とするとしています。この意味することは、存続をしていくということだとすれば、再び、国民に対する公約違反となりますが、連合長の見解とともに、国からはどのような指導・指示を受けているのかを合わせて伺います。
次に現行制度を継続していくことに対する見解についてですが、
少子高齢化がすすむなかで、現役世代、こうれいしゃのふたんわりあいが、明確化されたことや、都道府県単位の財政運営により、保険料負担の公平性が図られたと認識しており、今後も維持されるべきものと考えています。また、このことについて、くにからは、特に指導等は、ありませんが、社会保障制度改革国民会議の報告を受け、現在、法制化に向けた国会での審議が始まったところですので、今後、その動向を注視していきます。
大庭 質問③
その国民会議の報告書では、「高齢者医療制度が十分定着している」としていることを最大の理由にしているように思われますが、ことは重大です。まず、何を根拠に「定着している」というのか、国はどう説明していますか、伺います。
広域連合長 答弁③
次に国民会議報告書で、制度が定着していると判断したことに係る国の認識に特に国からの説明はございませんが、制度施行から5年が経過し、安定的に運営されていることや、国民会議での議論を踏まえ、定着していると判断されたのではないか、と考えています。
大庭 質問④
そこで高齢者の生活実態はどうでしょうか。
現実は、保険料軽減策等の一定の改善をせざるを得なくなっています。しかし、それでも、保険料負担の増え続けることに耐えられなくて、滞納する方が増大し、滞納者数は、各年度の事業報告で、2008年度1232人、2009年度7282人、2010年度9117人、2011年度13775人、2012年度13926人となっています。もともと、後期高齢者医療制度に組み込まれた方々の所得階層別被保険者状況を見ると、2012(平成24)年度の「所得なし」が55.70%、「1~50万円未満」が6.23%、200万円未満は全体で88%超、約9割の方が200万円未満の低所得者層であることによるものです。そのため、滞納者への短期被保険者証の交付と滞納処分と称する無慈悲な差押えが行われることになり、「滞納があっても資力がない」と認められるために、執行停止(停止欠損)処分になったものが132人あったとのことです。所得なし層が過半数を占める被保険者の中で、保険料を課してはならない方に課す矛盾が出たものです。高齢者人口増と給付増により保険料負担が増大するという根本的な矛盾は解消されず、ますます深刻化することになっています。こうした実態は、制度の「定着」どころか、制度の破たんを示しているものではありませんか。見解を伺います。
広域連合長 答弁④
次に、制度が定着しているとされていることに対する見解についてですが、本制度は、老_人保健制度での、高齢者の医療費に対する現役世代と高齢者の負担関係が不明確であるといった閻題点を解決するために、増大する高齢者の医療費を公費、現役世代、高齢者でその負担能力に応じで負担する仕組みとなっており、この点については、今後も維持されるべきものと考えています。制度開始から、低所得者に対する保険料軽減の拡大や、自己負担割合判定基準の見直しなど、状況に応じた様々な改善を積み重ねてきた結果、6年目を迎えた現在において、制度については概ね、定着が図られていると考えています。
大庭 質問⑤
国民会議でしめされたプログラム法案は、あくまで「改革」の大まかな概要と実現の目標年次を定めた政府の方針文書のようなものです。この内容を認めるわけにはいきません。報告では、後期高齢者医療制度は、「実施状況等を踏まえ必要な改善を行う」ということになっていますが、実施状況等とは、具体的にどういうことなのか。伺います。75歳以上の生活実態を反映させるべきと考えますが、伺います。
広域連合長 答弁⑤
次に、国民会議報告書に示された「実施状況等」についてですが、社会保障制度改革推進法に基づく「法制上の措置」に係る閣議決定において、低所得者の保険料負担を軽減する措置や、被用者保険者に係る後期高齢者支援金のすべてを総報酬割とする措置など、の「実施状況」を踏まえることとされているところです。
次に、後期高齢者の生活実態を反映させた制度改善についての取組ですが、低所得者に対する保険料軽減措置の拡充など、制度の構築を検討されているもの考えています。
大庭 質問⑥
厚生労働省は、一部の人の保険料を特例で軽減している措置を段階的に廃止する方向で検討に入ったとの報道がされました。社会保障審議会の部会で対象や時期について議論を始めて、軽減幅の縮小が始まるのは、早くて2015年度以降というものです。国民会議の報告では「実施状況を踏まえ改善を行う」としていますが、よもや、この軽減措置を廃止するということを示しているものなのでしょうか。だとすれば、改善ところが、改悪でありけっして許されるものではありません。軽減措置の段階的な廃止について、国からどのような説明がなされたのか。また、廃止しないよう国に要請すべきと考えるが見解を伺います。
広域連合長 答弁⑥
次に、保険料法定軽減の特例措置についてですが、これは、後期高齢者医療制度の施行時の追加的な措置として導入されたもので、低所得者等を対象に、均等額の8.5割、9割軽減、所得割額の5割軽減等の措置がとられています。 見直しについては、国の社会保障審議会医療保険部会で議論が始まったところであり、今後の国の動向を注視していきます。
大庭 質問⑦
高齢者の生活実態の把握についてです。被保険者から意見を聞く場として、公募によるモニター制度を設け、年2回の懇談会や年1回のアンケートを実施しているとのことですが、懇談会の内容とアンケート等で出された意見や特徴について伺います。出された意見は、どのように生かし活用してきたのか、伺います。
広域連合長 答弁⑦
次に、登録モニターによる懇談会についてですが、第1回懇談会を1年12月に開催したから、現在まで8回開催しております。 開催当初は制度に関することや保険料額等についての御意見を多くいただきましたが、最近の懇談会では、保険事業や健康に関するご意見を多くいただいているところです。また、いただいた御意見の活用についてですが、広域連合の全国組織である、全国後期高齢者医療広域連合協議会を通じ、国に対して要望しているところです。今後も、引き続き様々な機会を通じて、高齢者の生活実態の把握に努めていきます。
大庭 質問⑧
財政安定化基金についてです。
今年度、2013年度は、2014年度・2015年度の保険料を算定する年度でもあります。2012年度~2013年度の保険料算定に当たっては、保険料の増加することが見込まれたことから、2011年10月に厚生労働省は、財政安定化基金の取り崩しなどの対応を要請する通達をだしました。その趣旨から、2012年度と2013年度の保険料の増加抑制を目的にして、基金残高60億円のうち40億円を取り崩し、単年度20億円が活用されることになりました。
ところが、東京都や福岡県の広域連合では、これまでの積立てた基金にとどまらず、2012年から2013年度の積み立てる基金からも一部取り崩しを予定するなど、積極的に活用されたとしています。来年度の保険料算定にあたって、国からどんな指導、指示が成されているのか、伺うと同時に、積み立てられた財政安定化基金残高を伺います。
広域連合長 答弁⑧
次に、財政安定化委基金についてですが、25年8月27日付の26・27年度保険料率算定における国力心の通知においては、保険料増加抑制のための基金の公費を見込む場合は、県と協議を行うこととされ、その際には、28・29年度保険料率改定において保険料増加要因となることに留意することが記載されています。また、募金の残高は、25年3月末現在で、約59億5100万円と伺っています。
大庭 質問⑨
また、2011年10月の通達では、都道府県や市町村への補助金の要請に対しては積極的に答えるよう、都道府県や市町村に要請しています。これらに答えて、東京都は一定の補助金を出すとともに、区市町村でも葬祭費用など4項目の負担をするとしています。こうした事例に学び、神奈川県や県下の市町村に積極的な協力を求めるべきと思いますが、見解、決意を伺います。
広域連合長 答弁⑨
最後に、県や市町村への補助金の要請についてですが、後期高齢者医療制度を運営していくための財政の仕組みは、国が定める基準に沿っています。法定の負担に加え、県及び市町村にさらなる負担を依頼することは、現下の厳しい財政状況を踏まえると、困難であると考えています。以上でございます。
大庭 再質問①
高齢者の生活実態の把握について再度お伺いします。
被保険者からから意見を聞く場として、登録モニターによる懇談会で把握する趣旨のご答弁があり、登録は、公募でホームページや広報で募集するとのことです。どれだけのお年寄りがパソコンを活用し、また、目が不自由な方も増える中、広報を見て、交通機関を乗り継ぎながら懇談会に参加するために、登録をする人がどれだけいるのでしょうか。結果、被保険者87万に対して、結果公募人数はわずか40名ほどです。これでは高齢者の生活実態の把握はできません。生活が苦しい高齢者の声をすいあげ安心した老後を迎えられることはできないことは明らかです。
川崎市社会保障推進協議会が市内支所の保険年金課懇談会を実施し、その中で大師支所の説明では、「短期証対象者が50件おられたが、すべての事例をあたり、説明した結果発行がゼロになった」とのことです。何より面談で実態を正確に把握すれば、滞納処分の執行停止が増え、また一人ひとりの苦しい生活の現状をつかめることができるし、その人にふさわしい支援の方向性もでてきます。
そこで、実態把握をするために実滞納者への訪問調査の実施をすべきと思います。基本は全件面接調査ですが、少なくとも全自治体で対象の一定比率で抽出調査をすべきですが、見解を伺います。
広域連合長 再質問答弁①
大庭議員のご質問にお答え申し上げます。滞納者に対する訪問調査の実施についてですが、収納対策を進める上で、被保険者の生活実態など、個々の事情を十分に把握することは大変重要です。
保険料の徴収務は、市町村が行うっておりまして、各市町村において、個々の滞納者の所得状況や、滞納の原因など把握してうえでケースごとに対応されていると認識しております。以上、御答弁申し上げました。
大庭 意見・要望
いずれにせよ、高齢者の実態をつかみいかすこともできないのが現行の制度です。根本的な矛盾は解消されません。この制度を廃止し、かつての老人保健制度に戻すことを求めて、質問を終わります。