「若い世代の就労が安定どころか不安定雇用の拡大につながる」意見書案に反対の討論を行いました。(10月3日)
公明党から意見書案の提案があり、自民党、民主党、みんなの党、無所属議員(3) が賛成、日本共産党と無所属議員(1)が反対。
意見書案第14号「若い世代が安心して就労できる環境の整備を求める意見書」についての以下反対討論の内容です
私は日本共産党を代表して、ただいま提案されました、意見書案第14号「若い世代が安心して就労できる環境の整備を求める意見書」について反対討論を行います。
本意見書案の提案趣旨に、「ライフスタイルの多様化により若い世代に非正規労働者が増え」た、とありますが、今年6月の日本経営協会の調査では、「今後の働き方で正社員を希望する」とした非正規労働者が54.6%を占めており、若者は自ら望んで非正規雇用を選択したわけではありません。
そもそも1986年に施行された労働者派遣法では、“派遣労働は、あくまでも臨時的・一時的業務に限り、常用代替えにしてはならない”とされていました。それを1999年に対象業務を原則自由化、2004年に製造業の派遣を解禁するなどの規制緩和が歴代政権により行われた結果、正規社員が非正規社員に大量に置き換えられてきました。非正規雇用を増大させてきたのは、この間の政治によるものであることは明らかです。川崎市でも非正規労働者は増え続けており、2012年度の総務省・就業構造基本調査によれば、雇用者の約3割を占める22万1000人に上っています。
低賃金のうえ、“いらなくなれば捨てる”という使い捨ての一方で、正社員は異常な長時間過密労働・サービス残業は当たり前という働かせ方が横行しています。このような社会、経済、そして企業に未来があるでしょうか。不安定雇用の拡大に歯止めをかけ、解雇の脅しや長時間労働のおしつけをやめさせ、働く若者の当然の権利を守ることこそ必要です。
意見書案の要望項目の1点目には「正規雇用と非正規雇用の間の格差是正」とあります。格差の是正ということだけでは、正規雇用の労働条件を非正規雇用の条件に合わせて引き下げることにつながりかねません。格差是正というなら、全日空が2014年度以降の客室乗務員の採用を20年ぶりに契約社員から正社員に切り替えることを決めたように、非正規雇用から正規雇用に切り替え、ディーセントワークを実現することが、時代の流れではないでしょうか。
また、「最低賃金の引き上げに向けた環境整備を進める」とありますが、一刻の猶予もならない最低賃金引き上げを環境整備にすりかえていることは問題です。
国に最低賃金時給1000円以上への引き上げを求めている「最賃裁判」の原告の一人である49歳のシングルマザーは、「大手弁当店のパートで働いたが、850円で始まった時給は4年半で950円までしか上がらず、月180時間働いても月収は手取りで16万円程度、家族4人が食べていくだけで精いっぱい」と述べています。日本の最低賃金は全国平均で時給749円、先進国で最低水準です。今すぐ生活保護基準以下の賃金体系を改善し、全国一律時給1000円以上を実現すべきです。
要望項目の2点目には、「若年労働者に過酷な労働環境を強いる企業に対して、違法の疑いがある場合は立入調査を実施し、悪質な場合には企業名を公表するなどの対策を強化すること」とあります。日本共産党は国会質問で「ブラック企業」の実例をあげて追求し、すでにこの9月から離職率の高い企業や法違反のある企業など約4千社を対象に立ち入り調査も行われています。この立場からこの項目の趣旨には賛成です。
過酷な労働で若者を追い詰め、モノのように使い捨てにする「ブラック企業」の広がりは深刻さを増しています。「ブラック企業」の最右翼と目されているある大手居酒屋チェーンの『理念集』には「365日24時間死ぬまで働け」と書いてあります。この会社では2010年6月に、入社2ヵ月の女性社員が1ヵ月間140時間もの時間外労働をさせられた末に過労自殺しています。このような労働法規を無視した「ブラック企業」に労働法の規制が及ばないのはなぜでしょうか。労働法規を企業に守らせる役割の労働基準監督官は全国でおよそ3千人、全事業所数576万に対してあまりに不足しています。にもかかわらず、労働基準監督官をふくむ地方労働行政職員は2011年までの10年間で約2千人削減されてきました。「若年労働者に過酷な労働環境を強いる企業」を問題にするのならば、それを規制する体制を削減してきた政治の責任が問われることを指摘せざるを得ません。
要請項目の3点目には、「勤務する地域又労働時間を限定した正社員制度…の導入を促進する」とあります。規制改革会議の答申によれば、「限定正社員」とは、「職務や勤務地・労働時間が特定される多様で柔軟な働き方」と説明されています。しかし、「限定」の代わりに処遇の切り下げ、格差が公認され、さらに職務や勤務地がなくなれば雇用契約も終了する、つまり解雇がしやすくなるという仕組みが隠されています。強い立場の企業が弱い労働者に不利な条件を強要して雇用を不安定にする恐れのある制度だと指摘されており、「若い世代が安心して就労できる環境」に逆行するものです。
「若い世代が安心して就労できる環境」のために真に必要なのは、若者を使い捨てにする働かせ方をただちにやめることです。財界・大企業は、企業の社会的責任と未来を担う若者への雇用責任を果たし、不安定雇用の拡大に歯止めをかけ、解雇の脅しや長時間労働の押し付けをやめ、働く若者の当然の権利を守るべきです。政府は安定した雇用と人間らしく働ける労働条件の確保という政治の当然の責任を果たすべきです。
提案された意見書案は、若い世代の安定した就労に結びつくどころか、不安定雇用をさらに拡大する内容だと言わざるを得ません。
以上から、意見書案第14号「若い世代が安心して就労できる環境の整備を求める意見書」には反対であることを表明するとともに、反対討論を終わります。
以下、意見書の内容です。
若い世代が安心して就労できる環境の整備を求める意見書
ライフスタイルの多様化により若い世代の暮らし方や働き方が変化して、非正規労働者や共働き世帯が増える中、若い世代においては、本来望んでいる仕事と生活の調和を実現させられず、理想と現実の隔たりに悩む人が少なくない。
中でも、働く貧困層といわれるワーキングプアから抜け出せずに結婚を諦めざるを得ない若者や仕事と子育ての両立に悩む女性の増加、正規雇用でありながら過酷な労働環境が原因で働き続けることができない事例の増加など、若い世代を取り巻く問題は多岐にわたり、年々深刻さを増していることから、今こそ国を挙げて、若い世代が安心して就労できる環境の整備が求められている。
よって、国におかれては、若い世代が仕事と生活の調和を保ち、安心して働き続けることができる社会の実現を目指し、一層の取組を進めるため、次の事項について特段の措置を講ぜられるよう強く要望するものである。
1、 世帯収入の増加に向けて、正規雇用と非正規雇用の間の格差是正、子育て 支援など総合的な支援を行うとともに、最低賃金の引上げに向けた環境整備を進めること。
2 、労働環境が悪いために短期間で離職する若者が依然として多いことから、若年労働者に過酷な労働環境を強いる企業に対して、違法の疑いがある場合は立入調査を実施し、悪質な場合には企業名を公表するなどの対策を強化すること。
3 、個人のライフスタイルに応じた多様な働き方を可能とするために、勤務する地域 又は労働時間を限定した正社員制度、テレワーク、在宅勤務等の導入を促進するなど、多様な働き方の普及及び拡大に向けた環境整備を進めること。
4、 仕事、子育て等に関する行政サービスについて、若い世代への支援策がより 有効に実施されて活用されるよう、利用度や認知度の実態を踏まえ、必要な運用の改善や相談窓口等の周知、浸透等に努めること。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
平成25年10月3日
議会議長名
衆議院議長
参議院議長
内閣総理大臣 宛て
総務大臣
厚生労働大臣